医療ソーシャルワーカーの歴史

History

ソーシャルワーカーを取り巻く環境や役割は変化しています。

現在の医療ソーシャルワーカー(注1)は今から100年あまり前に英米で生まれ、その後、1930年頃日本に導入されました。日本での歴史は約80年ほどになりますが、この間に医療ソーシャルワーカーを取り巻く環境や役割は、経済・社会情勢・医療や福祉の施策と共に変化し、今日に至っています。ここでは、その歴史をご紹介したいと思います。

 

初期の医療ソーシャルワーカー

英米で生まれた初期の医療ソーシャルワーカーは、資本主義国で医療社会問題が深刻化した19世紀末から20世紀初頭にかけて、貧しい労働者階級への対応策として生まれました。(注2)
 日本では、結核が社会的疾患であると認識されるようになった1920年代頃、相互扶助思想のもと、自然発生的な相談活動が施療施設において始まりました。そして、1929年、アメリカで学んだ浅賀ふさが聖路加国際病院に勤務されたことにより、アメリカの医療ソーシャルワークが日本に導入されました。
 また、時を同じくして医療の社会化が叫ばれ始め、セツルメントが開設され、医療ソーシャルワーカーも地域住民の診療調査など活発な活動を行いました。
 このように、施療的発生に始まり、アメリカ医療ソーシャルワークが導入され、両者を折衷した形で日本の医療ソーシャルワークは出発しました。しかし戦前は、医療技術のあり方や医療観、人権思想の違い、戦時下の社会情勢に阻まれ、なかなか普及しませんでした。

 

戦後日本の医療ソーシャルワーカー

戦後は、結核の蔓延に対応するため、GHQ主導のもとに保健所や国立療養所・病院に医療ソーシャルワーカーがおかれるようになりました。そこでは、貧困者や結核患者を主な対象者として入院援助、医療費問題の解決などの業務を行いました。その活動は次第に民間病院にも広がっていき、1953年には日本医療ソーシャルワーク協会が結成されました。 1960年代になると、医療ソーシャルワーカーはより幅広い生活相談業務を行うようになり、対象者も業務も拡大し始めます。疾病構造の変化に伴い、結核などの伝染病は一時息を潜め(注3) 、癌や脳卒中、心疾患などの生活習慣病、公害病などが問題となり始めました。高度経済成長のひずみが生じ、新たな生活問題を抱えた慢性疾患患者・家族が相談に訪れるようになりました。
また、精神医療分野では薬物療法の進展に従ってレクリエーション療法など各種療法や外来での治療、地域ケアが始まり、ソーシャルワーカーの担う役割が広がりました。64年には、日本精神医学ソーシャルワーカー協会が結成されました。

 

広がる医療ソーシャルワーカーの業務

1970年代以降、医療ソーシャルワーカーの業務は保健医療機関での個別的な相談だけでなく、総合的な事業としてさらに発展し始めます。医療技術の進歩により、対象者の抱える問題もますます多様化してきました。いわゆる狭い意味での医療行為だけでは解決できない問題があることを、多くの人々が認識し始めたといえるでしょう。慢性疾患の増加と老年人口の増加、社会的入院の問題化などで、医療ソーシャルワーカーは退院支援の役割も担い始めました。
 
1980年代になると、保健・医療・福祉の連携と統合、少子高齢社会の到来が叫ばれるなか、地域福祉の充実に向けてさまざまな法律・施策が政策課題にのぼり始めます。保健医療分野や福祉分野の資格制度も検討され、87年には「社会福祉士及び介護福祉士法」が成立しました。しかしこの中に医療ソーシャルワーカーは含まれませんでした。(注4)
 そのような中、89年に「医療ソーシャルワーカー業務指針」(注5)が示されました。業務指針では、疾病を持ちながらもできる限り地域や家庭において自立した生活を送るための支援者として、医療ソーシャルワーカーが位置付けられました。また同年のゴールドプランを契機に、在宅医療・福祉の整備が本格的に推進され始め、元来、退院計画や社会復帰への支援、地域での支援を業務のひとつとして行っていた医療ソーシャルワーカーへの期待が高まってきました。

 

福祉激動の時代と医療ソーシャルワーカー

1990年代になると、医療と福祉の世界は激動の時代を迎えます。90年の福祉関係8法改正に始まり、94年の21世紀福祉ビジョン、それに伴う各種福祉プランの策定など、福祉関係施策が次々と展開されました。社会福祉基礎構造改革により福祉に関る多くの法律が改正され、介護保険などの新たな仕組みも創られました。それと同時に、医療ソーシャルワーカーの果たす役割もますます多様化・複雑化してきました。資格制度の面では、97年に精神保健福祉士法が成立し、精神医療分野で働くソーシャルワーカーの資格化がなされました。
 
2000年には介護保険制度がスタートし、介護支援専門員として活躍する医療ソーシャルワーカーも生まれました。
 21世紀を迎え、医療ソーシャルワーカーが誕生して1世紀の時が経ちました。その間も、そして現在も、医療ソーシャルワーカーに求められる役割は変化し続けていると言えます。しかし、利用者に寄り添い、支援していく姿勢は不変です。医療ソーシャルワーカーの業務をより明らかにしていくために、そして、利用者と共に生きるために、日々の実践が積み重ねられています。


 

  • 注1 ここでは、いわゆる精神科ソーシャルワーカー(PSW)とその他の医療機関のソーシャルワーカー(MSW)の双方を含んで医療ソーシャルワーカー”としました。
  • 注2 英では1895年、COS運動の中、アルモナーが設置されます。米では1905年、キャボット医師により、医療ソーシャルワーカーが設置されます。これらが医療ソーシャルワーカーのルーツといえます。
  • 注3 近年、結核等の再燃や流行が問題となっています。
  • 注4 この時、社会福祉士とは別建ての医療ソーシャルワーカー資格が検討されたのですが、その法案は固まる段階にまで至りませんでした。
  • 注5 2002年に改正されました

参考文献

  • 小田兼三・竹内孝仁編『医療福祉学の理論』中央法規,1997年
  • 橘高通泰『医療ソーシャルワーカーの業務と実践』ミネルヴァ書房,1997年
  • 児島美都子『新医療ソーシャルワーカー論』ミネルヴァ書房,1991年
  • 斎藤安弘・阪上裕子編『保健・医療ソーシャルワーク』川島書房,1985年
  • 前田ケイ監修『保健医療の専門ソーシャルワーク』中央法規,1991年
  • 保険医療ソーシャルワーク研究会編『保健医療ソーシャルワーク・ハンドブック』【理論編】・【実践編】中央法規,1990年
  • 児島美都子『医療ソーシャルワークの現代性と国際性 MSW45年の歩みより』勁草書房,1998年
  • 杉本照子『医療におけるケースワークの実際』医学書院,1966年
  • 大野勇夫・上原千寿子編著『医療ソーシャルワーカー奮戦記』ミネルヴァ書房,1995年
  • 手島陸久『退院計画 病院と地域を結ぶ新しいシステム』中央法規,1997年
  • 武山ゆかり『家族が病に倒れたとき 医療相談室の現場から』小学館 1999年
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